2023/07/06 13:42
日本にいながらバリ島をより身近に、より良い場所に、より好きになれるプログラム、”Share the big LOVES”。 人・地球・動物に優しいブランドを目指すLilave。 そんなブランドミッションを達成するために、売り上げの10%をバリ島内の犬の保護活動に役立てています。 「なぜ犬の保護活動でバリ島に還元しているのか?」についてはぜひ「Share the big LOVES 第一回目活動報告」をご覧くださいませ。 第4回目のShare the big LOVESの主役となるのは、「チョコ」と「ごま」。どちらもLilaveの事務所付近で生まれた、男の子の子犬たちです。 左;ごま 右:チョコ チョコとごまとの出会いは、バリ島の雨季真っ只中の2022年11月。 バリ島の雨季は通常1日の中の数時間のみスコールが降るに留まりますが、昨年の雨季は珍しく雨量も多く1日中雨が降っていました。 そんな雨が降り注ぐある日、Lilaveの事務所付近の深い茂みから、子犬の泣き叫ぶ声が聞こえてきました。 「マフィン」を同じようなシチュエーションで保護し、亡くしたばかりだったため、すぐさま声のする方に向かいます。 鳴き声を追って深い茂みの中に入ると、木の間から子犬がこちらを覗いていました。「チョコ」との出会いです。 すぐさま保護し、歯の状態から母乳が必要な時期を過ぎていることを確認。 保護された際も、事務所に連れて帰った際も、一貫して人懐っこいのが印象的でした。 保護直後のチョコ チョコを保護した次の日も子犬の鳴き声がするため再度森の中に入ると、木の根の間から小さな体で精一杯の威嚇をしながら精一杯吠える子犬の姿が。「ごま」との出会いです。 ごまはかなり警戒心が強く、保護しようとすると木の根の間にどんどん潜っていってしまいます。 長時間の格闘の末、今日は保護を諦めようかとふと目線を上げると大きな蛇がごまの方に近づいてきていました。ごまに噛まれそうになりながら無理やり木の根の間から引きずり出し保護を完了。なんとか蛇の攻撃から守ることができました。 しかし、この保護の際のトラウマが原因か、ごまはしばらく全く人間を信用しなくなってしまいました。 チョコは人間を見ると大喜びで近づいてきて甘えてくるのに対し、ごまは私たちがご飯を持っていても人間がいるとケージの隅で体を縮こまらせ、目線をそらし、まるでそこに自分がいるのに気づかれないようにしているように見えました。 見られているとご飯が食べられなかったごま しかし時間をかけてコミュニケーション方法を試行錯誤すると、ごまも応えてくれ、次第に私たちに甘えてくるようになりました。 ワクチンが終わり、お腹の中にいた寄生虫を綺麗にしたタイミングで里親探しを開始しました。 バリ島の里親探しで一般的な、Facebookのレスキューグループでの投稿 子犬ということもありすぐに何件か応募が集まりました。 中でもチョコとごまを一緒に引き取りたいと、保護犬を飼うことへの情熱を語ってくれたバリ島北部に住む30代と50代の親子との3週間のトライアルを開始しました。 主な飼育者は母親となるものの、娘は母親の自宅兼レストランで毎日勤務しており、飼育も手伝うとのことでした。 その親子はレストランを営む一方で蜂の保護・啓蒙活動を行なっており、動物全般が好きだと言っていたこと、以前犬を飼っていた経験もあることや、チョコとごまを可愛がっている様子を動画で定期的に送ってくれていたことからトライアルを無事に終えるものと見込んでいました。 トライアル開始日 しかし、トライアルが終了する日に「ごまは懐かないから引き取りたくない」との連絡がありました。 すぐさまLilaveの事務所から往復5時間かけ親子を訪ね、面談を実施。 ごまを適切に可愛がってくれる人が他にいるのではないかと思っていること、すでにごまを引き取りたい知人がおり、知人は信頼の置ける人であることを話されました。 確かにごまは、親子に全く懐いておらず終始不安そうに上目遣いで遠くから様子を眺めていました。 次の日から知人とごまを引き合わせるとのことで、不安が残りながらもその日はそのまま帰ることに。 しかし、2日後には「知人もごまが懐かなくて可愛くないから引き取りたくないと言っている」「ごまを引き取りにこないなら棄てる」との脅迫のようなメッセージが入りました。 その親子はチョコのみを引き取ることを希望していましたが、命を目の前にして「可愛くないから棄てる」と言えるような人間の元には置いておけません。 再度往復5時間かけて2匹を引き取りに急ぎました。 2匹の引き取りの際、飼いたいと言い出したはずの母親は一切姿を見せず、不安がって泣くチョコの声が聞こえているはずなのにさよならも言わないままでした。 怒りと悲しみと、悔しさが溢れる状況ですが、黙って捨てられなかっただけ本当に幸運と言えます。2人は「ドッグラバー」であり、最大限の愛とケアを与えたと最後まで自称していました。ある意味バリ島では本当に、2人は優しい犬好きの部類に入るのです。 バリ島では、子犬の可愛い時期のみ可愛がって飼い、可愛くなくなったら家に入れない、縛った袋に入れて棄てる、殺す、食肉として売る、そういったことがよく起こります。 さらにインドネシア全体の文化として、怒られそう・自分の評判や都合が悪くなりそうな場面ではフェードアウトして、なるべく問題とは対峙しない文化があるため、里親に連絡が取れなくなることや、「犬が逃げた」と嘘をつかれることもあるそうです。 そういったことが起こらなかったのは、本当に幸運でした。 さて、道中かなり不安そうだった2匹も、Lilaveの事務所に着くと「ここに帰ってきたんだ!」と安心したように甘えた後に楽しそうに遊び始めました。 しかし、子犬の時期の1ヶ月はかなり大きく、保護当初にはぬいぐるみのような可愛さで目を引いた2匹も、大きくなる兆しが見え始め里親探しはかなり難航しました。 以前里親希望だった人に連絡するも全滅。1ヶ月前は好評だったSNSでの募集も、反応が芳しくありません。 大きくなったチョコとごま そんな中、Lilaveの事務所があるバリ島南部のサーフスケートパーク、”Cintalam Pandawa”の全面協力のもと、毎日里親募集会を開くこととなりました。Lilaveの活動に賛同してくれたCintalamが、館内犬立ち入り禁止のルールを一時的に私たちに開放してくれました。 バリ南半島唯一のサーフスケートパーク、Cintalam。近隣のサーファーのコミュニティハブともなっている、アットホームなスケートパーク。 さらにCintalamの紹介で、1人のインドネシア人の男性がチョコを引き取りたいと申し出てくれました。木工業を営むヌヌンさんです。 ヌヌンさんは以前からストリートの犬たちを自分のできる範囲で、時には保護団体と協力しながら助けてきており、信頼がおけるとのことで紹介されました。 前回の親子の件があり、私たちとしてはかなり慎重になっていましたが、チョコの皮膚病(雨季に良く現れる疥癬)のケアに積極的に協力してくれたこと、私たちの「No chain, No Free roaming, No cage (繋ぎっぱなしで外飼い、放し飼い、ケージ飼いは禁止)」の条件に合わせて自宅の一部を迅速に改築した上で木工業の技術を活かして可愛い犬小屋も作ってくれたこと、Cintalamとの繋がりも定期的にあることからトライアルを再度開始。 無事、甘えん坊のチョコをとても大切にしてくれ、正式に里親となることが決定しました。 数ヶ月後の去勢手術の際には元気な姿の写真を送ってくれるなど、チョコを大切にしているのが今でも垣間見えます。 トライアル初日のヌヌンさんとチョコ。この日は緊張気味だったチョコも、ヌヌンさんが留守にすると怒るほどの甘えん坊に。 チョコの里親探しが終了した一方で、ごまはその内気な性格から全く里親が見つかりませんでした。 どんな人にも懐かず近づかず、普段は全く吠えないのに里親希望で訪ねてきてくれた人に限って吠えて威嚇します。毎日のように会うCintalamのあたたかいスタッフにも、おやつや好物のココナッツがないと近づく事もしません。 せっかく興味を持ってくれる人がいても、短い時間で賢く忠実なごまの魅力を発揮できないため、「この子は飼うのが難しい犬なんだね」と言われてしまいなかなかトライアルまで漕ぎ着けません。 ごまの様子を見ていると内気すぎて笑えてきてしまうほどでした。 毎日心を砕いて接してくれるCintalamのスタッフに名前を呼ばれ、遠くから迷惑そうな顔をしたごまのワンショット。 ごまは、とても頭が良く特別な犬です。 自分で決めた人にしか懐かず、目の前にいる人が信用できる人かどうか見抜きます。 里親希望で訪ねてきた人たちは、確かに私たちの条件に合わない人達がほとんどでした。 昨年から5ヶ月ほどかけて里親探しを全力で行ってきましたが、ごまにぴったりな里親が見つからなかったため、現在はLilaveのオーナーが飼っています。これまた過去にストリートでレスキューした3匹の先住犬とともに、楽しく健康に過ごしています。 先住犬たちとまったりするごま(写真左奥) 一連のチョコとごまの里親探しを通して、Lilaveには大きな学びがありました。 Lilaveのミッションは保護譲渡ではなく去勢・避妊手術とワクチン等の提供にあるということです。 外国人である私たちがインドネシア人、特にバリ島の人々のコミュニケーションの中に宿る小さな文化やサインを見抜くことはかなり困難で、保護譲渡は持続可能ではありません。 譲渡した結果無用な2次被害を引き起こすのではなく、未来の悲劇を少しでも防ぐことに集中することがLilaveができることだと身をもって実感しました。 チョコとごまの里親探しを行った5ヶ月間に、外国人・インドネシア人双方とたくさんのすれ違いとトラブルがあり、一時はチョコとごまの譲渡が終了した後は保護活動を休止しようとも考えていました。 しかし、お客様とやり取りを行う中で、遠い日本から私たちの活動を応援してくださる方々が予想を超えてたくさんいたこと、バリ島の犬を取り巻く環境に関心を寄せてくださる方々がたくさんいたことから勇気をもらい、主に去勢避妊手術とワクチン等の提供に集中することを決定し、活動を続ける決断を行うことができました。 いつも応援してくださるお客様のおかげで私たちの活動が継続できておりますことを心より感謝申し上げます。 活動費はこちらからご覧いただけます。 次回の活動報告もお楽しみに!