2026/07/09 19:58
自分の心の声に耳をすませながら、
自然とともに暮らす女性たちの“今”を大切に綴るコラムシリーズ、"Sun and Soul”。
今回のテーマは、「自由とは、「急がなくていいこと」人生が自分を見つけてくれるくらいの余白を持つこと」
----------------------------------------------------------------------
ここ数ヶ月、「人生に余白をつくること」について、ずっと考えてきた。
もっと生産的になることでも、もっと成果を出すことでもない。
ただ、余白をつくること。
多くの人は、自由とは「お金があること」「成功すること」「時間に縛られないこと」だと思っている。
でも、最近私は少し違う考えにたどり着いた。
本当の豊かさとは、
「次に行かなければいけない場所がないこと」「急がなくていいこと」なのかもしれない。
予定に余白があるから、ふとヨガに行ってみようと思える。
頭の中に余白があるから、目の前の人との会話を心から楽しめる。心に余白があるから、新しい人が入ってくる。
朝起きると、その日が自分のものだと感じる。
「やらなきゃ」ではなく、「やってみたい」に従って動ける。
会話が楽しいから、もう一杯コーヒーを飲んで、少し長くカフェに居る。
たまたま出会った人と、そのままランチに行く。
「なんとなく今だな」と思って、旅を予約する。そんなふうに過ごすようになってから、時間との付き合い方が大きく変わった。私たちは、忙しさの中でチャンスを逃しているだけじゃない。
チャンスが生まれる"余白"そのものを失っている。
カフェで隣に座った人との会話は、「時間がない」と思っていたら始まらない。
思いがけない誘いは、「次の予定」のことで頭がいっぱいなら広がらない。
新しいアイデアも、入り込むスペースがなければ降りてこない。
これこそが、本当の豊かさなんじゃないかと思う。
「もっと持つこと」ではなく、
すでに自分のもとへ向かってきているものに気づけるだけの余白があること。
でも、このことを本当に理解したのは、実際に体験してからだった。
5月の終わり、私は5年間続けた仕事を辞めた。
毎朝パソコンを開いてTeamsにログインしても、何も感じなくなっていた。
仕事を終えても、エネルギーが満たされるどころか、どんどん減っていく。
だから辞めた。
そして、自分の中でひとつ決めたことがあった。
「6月は、夏休みにしよう。」
大学を卒業してから、一度も本当の意味で休んだことがなかった。
収入目標も立てない。
成長しなきゃとも思わない。
戦略も考えない。
ただ、
「今日は何がしたい?」
その問いだけを大切にして過ごそうと思った。
毎日サーフィンがしたい。
もっと自然の中で、友達と過ごしたい。
知らない人と話したい。
意味があるかどうかじゃなく、「面白そう」で動いてみたい。
だから、その通りに過ごした。
朝、気に入っているジュエリーをひとつ身につける時間も、その日のスイッチになっていた。
誰かのためにおしゃれをするというより、「今日もいい一日にしよう」と、自分の気持ちを整える小さなリチュアルみたいなものだった。

着用ジュエリー:フィガロチェーンネックレス、ハイビスカスネックレス(チャームのみ)

ほぼ毎朝、お気に入りのカフェ”BGS”にコーヒーを飲みに行っていた。
カフェには、不思議な力がある。私は昔から、カフェという場所に惹かれる。
コーヒーを飲みに入ったはずなのに、気づけばそれ以上のものを持ち帰っていることがよくある。
それは、コーヒーがおいしいからだけじゃない。
その場所が、「何かが起こる余白」をつくってくれるからだと思う。
今の時代、本当にゆっくり座って、目の前の人とただ会話をする場所って意外と少ない。
ある朝、隣に座ったベルナルドという男性と話し始めた。
その会話の中で、隣にあるヨガスタジオ「Ulu Active」で朝ヨガを無料で受けられることを知った。
何度も前を通っていたのに、一度も入ったことはなかった。
翌朝、初めてYoga Sculptのクラスに参加した。
最高の一日の始まりだった。
ヨガのあと、またコーヒーを飲みに行くと、知り合いに会った。
その流れで、近くにいたイスラエル人サーファーのグループとも話すことになった。
どうしてインドネシアまで波を求めて旅をしているのか。
そんな話を聞きながら、「また海で会おうね」と言って別れた。
その日の昼、近所のワルンでランチを食べていると、隣にいたオーストラリア人サーファーが私の腕のリーフカットに気づいた。
「その傷、サーフィン?」
その一言から、また会話が始まった。
仕事を辞めて、自分が本当に好きなことに時間を使うようになったこと。
好きなことをしている人が持つ、不思議なエネルギーの話。
彼のおじいちゃんがもうすぐ100歳になること。
手術のためにオーストラリアへ帰ること。
そんな深い話を、初対面なのに自然としていた。
「今度一緒にサーフィンしよう。」
そう言って別れた。
見知らぬ人と、人生の大切な話をしている。
そんな瞬間って、不思議だけどよくある。

午後家に戻って仕事をしようと思ったら、停電した。
Wi-Fiもない。エアコンも動かない。
だから、サーフィンに行った。そして、その日も最高のセッションになった。
いい波に乗れて、ラインナップで友達にも会って、気づけば3時間近く海に入っていた。
水中にいたフォトグラファーの友達が、波を乗り終えた瞬間の、最高の笑顔を撮ってくれていた。
その写真を見て思った。
「この感覚を、一生忘れたくない。」
サーフィンは、子どもの頃みたいな無邪気さを思い出させてくれる。

そして、その翌日。
3年前に友達を通して出会ったKaneから突然メッセージが来た。
私が日本のサーフィン雑誌に記事を書いていることを覚えてくれていて、
「記事を書いてくれるなら、Sumbaのサーフトリップに招待したい。」そう言ってくれた。
たまにメッセージをやり取りする程度の関係だった。
だから、まさかそんな話になるなんて思ってもいなかった。
でも、そのタイミングは「今」だった。
時間にも、心にも、余白ができた、このタイミング。
それから、ずっとそのことを考えている。
人生で起きた最高の出来事は、
必死に追いかけたから起きたわけじゃなかった。
余白があったから、向こうからやってきた。
人生を変える会話。思いがけないご縁。「ここにいてよかった」と思える波。
そういうものは、予定で埋め尽くされた毎日には、なかなか入り込めない。
人は、「今ここ」にいる人に惹かれる。
次の予定でもなく、仕事でもなく、締め切りでもなく、ちゃんと目の前にいる人。
そんな存在には、不思議な引力がある。
戦略では作れない魅力だと思う。
自由そのものがゴールなんじゃない。
本当のゴールは、「今ここにいること」。
目の前の人と、目の前の時間を心から味わえること。
いつも何かに急かされる人生ではなく、今いる場所にちゃんといられること。
もちろん、
「仕事を辞めてバリに来よう」
と言いたいわけではない。
私が伝えたいのは、たったひとつ。
あなたの人生には、余白がありますか?
もしないなら、そこから始めてみるのもいいかもしれない。
自由とは、急がなくていいこと。
そして、その「急がなければ」という感覚の多くは、
案外、自分で作り出しているものなのかもしれない。

大学時代にニューヨークへ留学し、中東での仕事やオーストラリアでのワーキングホリデーを経て、現在はバリ在住。
フリーライター、翻訳家、クリエイターとして多岐にわたる活動を行っている。波と人、そして直感に導かれながら、海のそばで自由なリズムを大切に暮らしている。