2025/08/05 16:39
自分の心の声に耳をすませながら、
自然とともに暮らす女性たちの“今”を大切に綴るコラムシリーズ、"Sun and Soul"。記念すべき第1回目は、バリ島やオーストラリアなどを自由に旅しながら暮らす、Mikiの物語です。
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物理的にも精神的にもスペースができると、新しいものが入ってくる。
怪我をしたり風邪を引いたりして、海に入れない期間は、毎回「宇宙からのメッセージ」だと思っている。文字通り、身体の休憩という意味もあるけれど、何か今の自分に必要なことを伝えようとしてくれているような気がする。
怪我をする前の数週間は、毎週オーストラリアやハワイからバリに遊びに来る友達と、ディナーやパーティー、ヴィラでの滞在、そして一日中サーフィン。落ち着いて何かに取り組む時間もなく、クリエイティビティも湧かず、「地に足がついていない」という表現がぴったりの日々だった。
「そろそろスローダウンして、いろいろ整理したいな」と思っていたタイミングで、サーフィン中にサーフボードのフィンでふくらはぎを深く損傷し、5針縫う大怪我を負った。
「ほらね」と、まるで何かが起こることをわかっていたかのように、強制スローダウンの日々が始まった。
前から読みたかった本をビーチで読む。
ジャーナルを再開。
キャッチアップしたかった友達と、毎日ゆっくりハングアウト。
上手く歩くこともできないから、自然と仕事に充てる時間が増える。
気が紛れることが多くて、「あれ、意外といけるじゃん」と思えた1週目。
でも2週目になると、足が思うように動かない不自由さにイライラが募り、「もうスローダウンは十分。早く体を動かしたい」という焦燥感に変わっていった。
雲ひとつない晴天、キラキラと光る海を前に、ただビーチに座って潮風を感じるだけの日々。
何もぱっとしない日が続き、悔しさや、何もできないやるせなさ。
「せっかくだから、この期間にできることをしよう」と思っても、モチベーションはゼロ。
普段は朝起きてから夜寝るまでフル回転で動いているからこそ、この“空っぽ”な感覚がやけに重く感じた。
動けないまま、流れもなく、前にも進めず、ただ“滞っている”ような感覚。
それに追い打ちをかけるように、乾季真っ只中のインドネシアには、毎週新しいスウェルが到着する。まさにサーファーの夢のようなコンディションだった。
そんな中、自分は海に入れず、まさにロックボトムにヒット。
海水に浸かることが、こんなにも自分の心の安定と深く結びついていたことに海から遠ざけられて、当たり前が当たり前じゃなくなって初めて気づいた。
毎日波があって、思う存分にサーフィン出来て、週末は友達とサンセットを見ながら泳ぐ。
バリに住んでいると当たり前だと思っていたこんな日常が、どれだけ最高で、感謝すべきことか。
そしてバリ移住前にどれだけこんな生活を望んでいたのかも、きっかけは怪我だったけどまさに初心に戻るタイミングだった。
海は、私が気持ちを整理して、手放して、リセットする場所。
動けない時間が、私を内側へと向かわせてくれた。
それこそが今の私に必要だった“場所”だったのかもしれない。
そんな期間、海に代わって文章を書くことで気持ちが整理する手段になっていて、どこか吐き出し口にもなっていた。
やっと海に入れるようになった今、この連載を書き始めた。
友達からの、意外なひと言に背中を押されて、ずっと先延ばしにしていたことを始めてみたら、どんどんクリエイティビティが湧き出してきた。
ほぼ1ヶ月ぶりにサーフィンも再開出来そうで、グラウンディングの期間を終えて、やっと軌道に乗れそうな、そんな8月の始まり。
着用ジュエリー:ウェーブピアス、レイヤードネックレスセット、フランジパニリング、バイカラーウェーブリング
着用ジュエリー:フランジパニリング、バイカラーウェーブリング
大学時代にニューヨークへ留学し、中東での仕事やオーストラリアでのワーキングホリデーを経て、現在はバリ在住。
フリーライター、翻訳家、クリエイターとして多岐にわたる活動を行っている。
波と人、そして直感に導かれながら、海のそばで自由なリズムを大切に暮らしている。